大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 昭和24年(う)685号 判決 1950年4月19日

被告人

富山桂奎こと

余桂奎

主文

原判決を破棄する。

本件を山口地方裁判所に差戻す。

理由

弁護人辻富太郞の控訴趣意第一点について。

原判決書に依れば原判決が所論の樣な事実を認定して其の証拠として所論の樣な書類を挙示して居ることは相違ないところである。而して原判決が挙示して居る証拠の中被告人の檢察官に対する供述調書に依れば所論の如く被告人が八月八日朝五時頃被告人方で香山哲植こと朴哲植から砂糖十四貫を受取り翌九日午前十一時頃竹本方に代金の支拂に行き其の際香山哲植、呉田吉鉉(呉吉鉉)香山某の三名が居り、呉田が砂糖は三名共同のものだから高く買つてくれと云はれて、百匁百五十円の割合で代金二万一千五百円を支拂つたことを認めることが出來るところ賍物罪に関する規定は賍物が移轉して被害者が其の物の回復をすることが困難になるのを防止することを以つて、目的として居るので、賍物故買罪が成立するには單に賣買等の有償讓渡の契約をし、又は代金等を支拂つた丈では足らず、賍物を受領することを要するものと解すべきであるから、原判決は被告人の本件賍物故買の犯罪事実を認定判示するに当り、被告人が八月八日朝被告人方で朴哲植から本件砂糖を受領した時に本件故買罪が成立したものとして、八月八日被告人方で朴哲植から本件砂糖を故買したと認定判示したものと認められるから、此の点においては原判決には所論の樣な事実誤認又は理由不備の違法があるものとはいわれない。

(弁護人辻富太郞の控訴趣意第一点)

原判決は被告人は昭和二十四年八月八日自宅において朴哲植より盜賍品である情を知りながら配給砂糖十四貫を代金二万一千五百円にて買受け以て賍物の故買をなしたものであると認定してその証拠として被告人の檢察官に対する供述調書、余福德の司法警察員に対する供述調書、司法警察員作成に係る昭和二十四年八月十一日領置調書、藤井壽枝作成に係る同月十七日附申述書を挙示している。しかし以上の各証拠に依つては右の事実を認めることはできない。即ち被告人の檢察官に対する供述調書に依ると被告人は八月八日午前五時頃朴哲植が自分方へ來たので同人より砂糖十四貫を受取り翌九日午前十一時頃竹本方において呉吉鉉から砂糖を是非高く買つてくれと云われて百匁百五十円の割である代金二万一千五百円で右砂糖を買受けたと云ふのであるから該賣買の日時は八月九日であり場所は竹本方である賣主は呉吉鉉であることが判るのであつて、判示の如く八月八日被告人方で朴哲植より盜賍品である情を知り乍ら買つたと云ふ資料にはならない。(後略)

(註 原判決は理由不備により破棄差戻)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例